2024年10月11日に公開された映画『室井慎次 敗れざる者』
「踊る大捜査線」シリーズは小学生の頃に見てから大好きで、特に連続ドラマから映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』までの時期は群像劇の魅力と細部まで作り込まれた画面で夢中になりました。
ただ、個人的には2003年の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』以降は脚本の質も下がり、物語としての面白さも薄れてしまった印象も強かったです。
2012年に一旦シリーズはファイナルを迎えましたが、2024年に室井慎次が主役で新作が公開されると突如発表。
「なぜ今さら室井なのか?」「復活させるにしても本編ではなくなぜスピンオフなのか?」と、正直なところ懐疑的でしたが、実際に作品を観てみてもその疑問を拭うことはできませんでした。
WOWOWで視聴したので、ネタバレありの感想でも。
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ストーリー
青島との約束は、まだ終わっていない。正義を信じ、理想を追い続けた男が見た最後の希望とは――。警察を辞め、故郷・秋田に帰った室井慎次。「事件の被害者家族・加害者家族を支援したい」という想いで、少年たちと一緒に穏やかに暮らすも、ある日、家の傍で他殺と思われる死体が発見される。そんな中、かつて湾岸署を占拠した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だという少女・杏が現れ、穏やかな暮らしを求めたはずの室井の日常が徐々に変化していく。かつての同僚であり、今は秋田県警本部長になっていた新城に頼まれ、警視庁捜査一課の若手刑事・桜とともに、捜査に協力することになった室井。不器用ながらも組織を守り、組織と戦い、組織のために生きてきた男が、不器用ながらも実直に、必死に家族を守ってきた。敗れざる者・・・室井慎次の物語が、今ここに完結する。
引用:Amazon Prime Video 室井慎次 敗れざる者 より
感想
率直に言って、この前半は長年のファンとしての私の期待を打ち砕くには十分すぎる内容でした。
ストーリーもそうなんですが、なんだか細かなところがすごく雑に感じてしまい全く作品に入り込めませんでした。
たとえば、矢本悠馬演じる乃木が室井宅を訪れるシーンなんかは、玄関のドアを開けっぱなしにしてあたりを探しにいくのも不自然に感じました。
他にも遺体の身元がわかっているのに何かを探して町中に監視カメラを大量に設置したりドローンを飛ばす演出も、意味深に見えるのに結局は何の伏線にもなっていないことがラストの捜査会議でわかる。
さらに、室井が地元の人々に詰め寄られる場面も、「田舎に住んでいて地域活動に出ていなければそりゃ言われるだろう」としか感じられず、演出の必然性が弱く感じます。
今作、ストーリーの中心となるのは室井宅前の池岸で死体が発見された事件ですが、身元が『THE MOVIE2』の犯人の一人だと判明する程度で、ストーリー自体はまったく進展はなし。
良かった点といえば、過去キャラクターが再登場して「その後」が描かれる場面くらいで、物語としての厚みは感じられませんでした。
キャラクターの不自然さ
登場人物の行動にも違和感が目立ちました。
福本莉子が演じる日向真奈美の娘・杏もずっとこの子が怪しいでしょ?といわんばかりのミスリードを誘うためだけに行動しているようにしか見えず、どうせ後半で杏は今までの育った環境のせいでこうなっているけど実はいい子だったんです!っていう展開がみえみえ(というか日向真奈美は個人的にはもうコリゴリ…)。
また、齋藤潤演じるタカのエピソードもなんか唐突でした。
室井が犯罪被害に遭った子供たちの里親になっているので、タカの成長を表す意味でも母親を殺した犯人と面会するストーリーを挟んでくるのはわかるんですが、直前に杏から「室井さんに殴られた」と告げられ、室井との仲がギクシャクしているのに、室井と仲直りする場面や話し合う場面もなくいきなり室井さんを尊敬していると言われてもえっ?じゃあさっきのあれは何やったん?ストーリー的にもこじれるシーンいらんくない?としか感じなかったですね。
そもそもの室井自身の退職の決断もそれでいいのか?と疑問がで続けていました。
「組織改革推進委員会」が解散したから即退職する、というのはあまりに軽く映ります。
青島や和久さんからの思いの継承とかそういうのをまずストーリーに挟まなあかんのちゃうの?という気持ちを納得させてくれるものは何もなかったです。
こうした積み重ねが、キャラクターの行動を「雑」に見せ、せっかくの人間ドラマを台無しにしている気がしました。
『踊る』が失ったもの
初期の『踊る』の面白さは、細部まで作り込まれた世界観と真面目に仕事をしているのに外から見ると少しズレていて笑える、という構造だったように思います。
それは群像劇としても魅力的で、登場人物たちがそれぞれに有機的に絡み合っていたはずです。
ただ、MOVIE2以降の脚本では、その「ズレ」の面白さが消え、代わりに「とりあえず馬鹿騒ぎすればいい」という軽さが目立つようになり、ストーリーと関係のない要素ばかりが積み重なり、観客に残るのは違和感ばかりになってしまった気がします。
最後に
辛口な感想を述べてきましたが、やはり長年好きだったシリーズの新作とあって後半作の『室井慎次 生き続ける者』で少しでも挽回してくれるのか?と、淡い期待も込めて放送を待ちたいと思います。



